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光圀伝 / 冲方丁

光圀伝 電子特別版 (上) (角川書店単行本)

光圀伝 電子特別版 (上) (角川書店単行本)

 

冲方丁の「天地明察」に続く歴史小説を読んだ。

基本的に水戸黄門と呼ばれる水戸徳川藩3代目藩主徳川光圀の伝記だ。

各章頭に光圀が自らの生涯を振り返った自書の引用を置き、経年で生涯を叙事的に書いている。

難解な漢籍の引用も多く、最初は少し辛かったのだが、そこは冲方、きっちりエンターティメントだ。幼少期の父、そして兄との葛藤を軸にグイグイ読ませていく。

物語を貫くテーマは「義とは」という問いだが、それ以外にも「兄弟」「友」、「仏教と儒教」「先立たれるということ」、「諦め、そして後世に引き継ぐこと」など複数のテーマが絡みあい大長編だがほぼダレることなく読めた。特によかったのが「天地明察」にはほとんどいなかった(一人いたが)ヒロインの存在だ。メインヒロインの泰姫(天然の天才ロリ姫)とサブヒロインの左近(ツンデレクール)がすばらしすぎる。特に左近とのプラトニックラブ描写はビンビンくる。

 

個人的には冲方の「マルドゥックシリーズ」、「シュピーゲルシリーズ」の大ファンなので、「天地明察」の時はおもしろかったけど「なぜこっちにいっちゃうの?そんな暇あったら早く続き書けよ!」という不満もあったのだが、「光圀伝」読んで完全に解消された。特異な文体が取りざたされることも多い作者だが、やっぱり手法ではなく物語強度に重きを置く人なんだなと強く感じた。